「憧れが消える瞬間」

勝手に物語

りょうたは、いつもクラスで人気者のけんじにあこがれていた。けんじは何をしても上手くいくタイプで、勉強もスポーツもそつなくこなす。みんなに優しく、先生にも信頼されている。りょうたは、いつかけんじのようになりたいと強く思っていた。

休み時間、りょうたはけんじに声をかけた。「どうしてそんなに何でも上手にできるの?」けんじは少し笑って、「そんなことないよ。僕だって、見えてないところでは色々大変なんだ」と答えた。

でもりょうたには、けんじが苦労している姿なんて想像できなかった。そんなわけないと思いながら、もっと聞きたくなった。「だって、いつも成功してるじゃないか。ミスしてるとこなんて見たことないよ。」

けんじはちょっと遠くを見ながら言った。「僕はね、みんなが見ている部分だけをうまくやってるんだ。けど、その裏でたくさん失敗してるんだよ。でも、それを誰も気にしないだけさ。」

りょうたは、その言葉に少し戸惑った。「じゃあ、どうやって成功してるの?」

けんじは笑って肩をすくめた。「うーん、成功って言うより、ただ続けてるだけだよ。失敗してもそれを隠すんじゃなくて、次に進むって感じかな。」

その言葉にりょうたは何かがストンと落ちた。「そっか、あこがれてるだけじゃ、同じ道は歩けないんだな。」

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